当ブログの管理人は、実際にフリーランスエンジニアとして12年間現場で働いてきた実績があります。
25歳のとき未経験でエージェントと契約させてもらったのですが、数ヶ月でエンジニアとしての素養がないことを判断され、その後はエンジニア業務ではなくセールスエンジニアの立場としてフリーランスで12年間働いていました。
12年間フリーランスとして現場常駐して良かったことはたくさんありますし、もちろんそうでないこともありました。今回は私の自己紹介と合わせて、フリーランスとして12年間働いて感じたことをお伝えいたします。
フリーランスエンジニアになったきっかけ
派遣営業からフリーランスエンジニアにシフト
フリーランスになる前は人材派遣会社の営業マンとして働いてましたが、諸々の考えがあってIT業界に転職をしたいと考えていました。たまたま当時付き合いのあったIT専門のエージェント会社(以下、エージェントA社)に相談したところ、フリーランスという立ち位置であれば仕事を紹介できるとの話を受け、縁をいただく流れとなりました。
自宅から30分ほどの勤務地、大手国内メーカー系SIerの中で、ネットワークインテグレーションチームのメンバーというポジションです。最初の報酬は30万円という設定でした。正社員時代の給料は手取りで20万程度でしたので、30万円という報酬にも魅力を感じていました。年金や保険・税金などは5万円引かれても25万円の手取り。大幅にアップ!!くらいに考えていた思い出があります。
しかし、プロジェクトに参画する3日ほど前に大きなトラブルがありました。
エージェントA社の担当はブラック中のブラックだった
参画3日前の夜、知らない番号から電話がかかってきました。
誰だろうと思いながら電話をとると、電話先の相手は日本語が片言の韓国人でエージェント会社(以下、エージェントB社)を営んでいるとのこと。
電話の要件としては、
- あなたの契約は私の会社で管理することになりました。
- あなたは未経験なので25万円からのスタートとなります。
とのこと。
フリーランスとして参画する3日前に、こんな話を一方的にされてしまったのですが、当時の私はフリーランス業界の作法や文化も分かりません。苛立ったものの、ここで突っぱねて仕事が無くなってしまうのではないかという不安がありました。
どちらにしてもエージェントA社からは一切聞いてなかった内容なので、一度確認させて欲しいと電話を切って翌日エージェントA社の担当者に確認を入れました。
その担当者から返ってきた言葉はこうでした。
- この業界は利益共存の関係で成り立っている。
- あなたがフリーランスとして働くことでみんながWIN-WINの関係を作らなければならない。
改めて話を整理すると、当初予定では、
という商流で契約する予定であったものが、
という契約になるとのこと。担当曰く、この商流であれば、A社、B社、そして私の3者がWIN-WINの関係が実現できると説得されました。
当然ですが、納得はできません。当初約束した30万円という契約金額が25万円と5万円も減額になったこと、そして会ったこともないよく分からない会社と契約をするなんて考えられませんよね。そういった話から交渉したのですが、A社としては直接フリーランスを雇うことができない、断るのであれば話は白紙と突っぱねられてしまい泣き寝入りするしかありませんでした。
これが私のフリーランスとしてのはじめての契約です。笑
現場入場と突然のアンマッチトラブル
このようなトラブルもありつつB社と契約し、フリーランスエンジニアとして業務開始しましたが、ここで新たなトラブルが生じました。エージェントA社が私の経歴書を偽造してクライアントに提出していたのです。
当時の私のITスキルを要約すると、以下の通り。
- パソコン使えます。ワード・エクセル・パワーポイントを業務で使っていました。
- OSやOfficeなどのインストール経験はあります。
- ネットワーク?自宅のパソコンをインターネットにつなげたことがあります。
- ホームページビルダーでホームページを作った経験があります。
全くもってエンジニアのスキルではありません。
このスキルが、
- 前職では情シス部門に在籍
- 自社内のネットワークを管理していた
- 社内イントラとして使用するポータルサイトの開発にも携わった
当然即戦力として期待され現場に配属されたようで、最初に与えられた業務はDNSサーバの検証環境を構築するミッションでした。今でも覚えていますが、WndowsNTにBIND4.8.xという環境です。それと合わせて、アズジェント社のFireWall-1という製品の英文ドキュメントの翻訳(英語力無し)というミッションを与えられました。
私がクライアントに全く分からないと伝えたときのクライアントの唖然とした表情、今でも忘れられません。
その後、これはできる?これはわかる?の何度かのやり取りがありましたが、私が対応できる仕事は一切なく、DNSサーバの検証環境を構築するというミッションだけを与えられて契約終了までの3ヶ月間放置となったのでした。
適職に巡り合いフリーランス生活が前に進み出す
契約終了の数週間前、クライアントの担当者から、別の仕事があるんだけど手伝ってみる?と声をかけられました。仕事内容は当時そのクライアントが代理店契約していたメーカーとのアライアンス業務です。顧客から引き合いに対してスペック確認や構成を作り、メーカーとのディスカウント交渉や納期調整をしつつ受注サポートを目指すといった業務です。
何もできなくて契約終了だけを待っていた自分に最後のチャンスを与えてくれたような気がして、その業務にチャレンジすることとなりました。
実際に業務を行っていくとセールス要素の高い業務で、自分の交渉によって利益が生み出せます。このようなセールス業務が自分には合っていたようでやりがいを見出せたとともに、当時の業界需要も重なってそのメーカーの製品が爆発的に売れ、クライアントの中でも大きな利益を出す事業にまで発展したのでした。
商流の違和感を除外する
新しい業務について数ヶ月ほど経過した際、エージェントA社の別担当者と接点を持つことになりました。その担当に突然商流に入ってきたエージェントB社のことを相談すると、すぐにA社の社長と掛け合ってくれて事実確認をしてくれました。
事実として分かったのは、当時のエージェントA社の担当はエージェントB社の役員としても名前を連ねていたようで、私の契約を使ってお金をB社にも落としていたことが判明されたのです。
改めてA社の代表から正式な謝罪を受けるとともに担当は解雇され、その月からA社との直接契約が実現できたのでした。その際、謝罪も含めてとのことでプラス5万円の契約をしてくれて、25万に下げられていた報酬は35万円に上がったのでした。
順調なフリーランス期間
商流的なトラブルもクリアとなり、クライアント先での担当業務も順調に成長していったおかげで、私の報酬も年々アップしていきました。35万円で契約し直した翌年には40万、その後、45万、50万、55万と毎年5万円づつ月額報酬が上がっていきました。この大幅な単価交渉ができるのはフリーランスならではの魅力でしょうね。
正社員は毎年月額で5万円づつ昇給してもらうのは大変ですが、フリーランスで実績をつめばこのような単価交渉も現実になります。最終的には70万円の報酬を貰いつつ副業もしていましたので、フリーランスとなって7年後32歳で年収は1000万を超えていました。
また、ポジション的にはその業務の主格となっていましたが、フリーランスという立場上、会社のしがらみにも関わる必要がなかった事も大きなメリットとして感じていましたね。
フリーランスとして働いていて感じた不安からフリーランスを辞めるまで
将来の見えない怖さとの葛藤
さて、年収もそれなりに貰えて順調のようにも見えますが、このままフリーランスとして働いていて良いのだろうかという不安も生じていました。と言うのが、私の業務はメーカーに特化したアライアンス担当であって、そのメーカーとの契約がなくなれば私の存在価値はありません。同じような仕事が別で見つかれば良いですが、そんなに都合の良いものでもありません。
たぶん、エンジニアとして働いているフリーランスであっても、40代半ばにもなってくると将来を考え始めると思います。50歳、60歳と歳を重ねたときに仕事をもらい続けられるのだろうか・どういった働き方ができているのだろうというかという不安ですね。
フリーランス業をしながら会社設立・そして現在
フリーランスとして働いてきた方の行先は様々な選択があります。働けなくなるまでフリーランスを続ける、現場から離れて講師業などにシフトする、また正社員として雇ってもらい安定性を得るなどです。私の場合は、フリーランスとしての先が見えないこと、その上で正社員に戻るという選択肢を持ちたくなかったことから会社を作るという選択を取りました。
小規模ながらSIer立ち位置の会社を作り、社員数で40名ほど、フリーランスや業務委託のメンバーを合わせると100名近くのエンジニアが稼働する会社まで成長しました。その会社は12年間運営に携わった後で引いて、現在は新規で立ち上げている会社のお手伝いをしています。
こちらが私のプロフィールとなります。改めて思い返してみると既に20年以上もフリーランスエンジニアと関わっているのですね。
フリーランスで働いてみての魅力と不安について
改めてこれまでのフリーランスとの関わりを思い返してみて、自分が感じた魅力を纏めますと、
- 報酬は正社員の上がり方とは比べられないほどのスピードで上がった(25万→70万+副業)
- 副業が自由であったため、現場の業務時間以外は自由に副業を当てられた
- 正社員ならではのしがらみに関わらずに済んだ
といったところです。
逆に不安だったポイントとしては、私の場合はその業務を一任されていたので、契約期間で切られてしまうという不安はほぼありませんでしたが、常駐フリーランスとしていつまで働けるのだろうという不安が大きく、それは年々高まっていきましたね。私の任されていた業務が俗人的なものであったため、その仕事が終わってしまったら替えが効きづらいというのも大きな不安要素でした。
実際のところ、私が会社を立ち上げて間も無く(フリーランスと起業した会社を並行している期間)に、お世話になったメーカーとのアライアンス契約は無くなってしまいました。そのまま何も考えずにフリーランスとして働き続け、会社設立のタイミングが遅れていたら今の自分はいなかったのだろうと思いますね。
フリーランスという働き方は、フリーランスならではの様々なメリットがある反面、長い人生全体で考えたときにはいつまで続けられるか、続けられなくなったときにどうするべきかを考えざる得ない職種だと思います。
もちろん現在のように終身雇用のない正社員であっても同じ事かもしれませんが、フリーランスという働き方は正社員以上に自身の人生に対して責任を叩きつけられるのは事実。これからフリーランスを目指す方は、報酬面や自由面など目先の働きやすさを体感する期間があっても良いと思いますが、そういった反面もあることを知った上でフリーランスという働き方を考えて欲しいなと思います。