IT職種の中で縁の下の力持ち的存在なのがインフラエンジニア。インフラエンジニアが担当する領域は、けして日の当たる事は無いものの、大変な技術と苦労がありインフラエンジニアのおかげで世のITは支えられていると言っても過言ではありません。
インフラエンジニアの仕事は、みなさんが使うインターネット環境を繋ぐ「ネットワーク」や、各種サービスを提供する「サーバー」、情報を管理する「ストレージ」といった、ITサービスが成り立つ上での基盤を構築し日々運用していく事。
本記事では、そんなインフラエンジニアの仕事内容とその魅力について、またフリーランスでインフラエンジニアになった際の単価相場についてお話しいたします。
インフラエンジニアってどんな仕事
インフラエンジニアの仕事内容を説明するために、まずはインフラそのものについて説明します。「インフラ」とは「インストラクチャー」の略で、日本語では「土台」や「下部構造」という意味を指します。日々生活している中でも、電気・水道・ガス・道路などは社会インフラとか公共インフラなどと呼ばれてますね。
そういった公共インフラは人々が生活をする上で欠かせないもので、日々当たり前のように使えるものですから、「電気が使えてありがとう・道路を走らせてもらえてありがとう」などと感謝する人は居ないと思います。その一方で停電が起きたり震災などで道路が使えなくなってしまうと大変なことになるのはイメージがつくでしょう。
ITにおけるインフラについても同じような要素があり、普段何気なくインターネットなどのITシステムを使っていますが、裏ではインフラエンジニアが様々な環境を整備しているのです。
普段インターネットを使用している中で「インターネットつながりにくい」「サーバーダウンしている」といったケースは誰でも感じたことがあるかと思いますが、そういったシーンの裏ではインフラエンジニアが必死に改善を行っています。
サーバーエンジニアとネットワークエンジニア
インフラエンジニアの仕事は、大きくサーバーとネットワークの2つに分類されます。両方扱えるマルチなエンジニアも存在しますが、それぞれの分野に特化したエンジニアを「サーバーエンジニア」・「ネットワークエンジニア」と呼び分けます。ここでは、サーバーエンジニアとネットワークエンジニアそれぞれの仕事内容を説明していきます。
サーバーエンジニアの仕事
サーバーエンジニアは、サーバーの設計・構築運用業務を担当します。サーバーとはシステムを通じてサービスを提供するソフトウェア、あるいはその機能が稼働しているコンピュータのことです。サーバーエンジニアは顧客が希望するサービスの目的や規模に応じてサーバーを選定し、それに適したOSやソフトウェアの設計・導入なども行います。
またOSだけでもLinux、Windows、UNIXと分類されますし、ミドルウェアにおいてもWebサーバを構築するためのもの、メールサーバを構築するためのものなど様々です。サーバエンジニアと言っても一括りに全てが出来るわけではなく、長年サーバエンジニアとして経験を積み重ねていく中で得意分野を持てるようになりますし、その得意分野がエンジニアとしての価値をあげていきます。
余談ですが、一般的なものでサーバというと、下記のようなものがあります。
WebサーバーやWebAPサーバーを構築するのであれば、ApacheやTomcatなどのソフトウェアに精通するなど、それぞれの用途のサーバに応じて使うソフトウェアが異なり、一つ一つが深い知識が必要となります。
また以前は、サービス要求に応じたスペックのサーバを購入し構築していましたが、近年ではクラウドサービスが主流となり、自社でサーバーを持つ必要がなくなってきました。そのため、サーバーエンジニアとして今後も活躍していくためには、物理的なサーバーの構築スキルや運用スキルとともにクラウドに関する知識やスキルも必須事項になりつつあります。
ネットワークエンジニアの仕事内容
ネットワークエンジニアは、ルーターやスイッチなどの機器を接続し、サーバーからユーザー間、ユーザーからサーバー間へのデータの送受信を適切に行えるようネットワーク基盤を構築し運用していく業務を担当しています。公共インフラで言えば道路や電線、水道管のような役割です。
単純にインターネットに繋ぐだけではなく、通信の流れや通信の量(負荷)なども考慮して、どのような道を構築すれば効率よく、障害を起こすことなく通信できるかを考えて設計・構築していきます。
また、負荷分散やファイヤーウォール、セキュリティに関してもネットワークエンジニアが担当することも多いです。
フリーランスのインフラエンジニアという働き方
サーバーやネットワークなどインフラ系の案件は常に安定した需要があり、正社員として一定期間働いて実力をつけた後、独立してフリーランスの道を選ぶ技術者も多いです。一定の経験と時流に沿った技術を保有していけば、フリーランスであっても仕事の獲得に困ることは少ないでしょう。
また、インフラは作ったら終わりではなく、常に安定して動くシステムであることが要求されますし、新しいシステムが随時構築されていきますので、システムを構築した後も維持構築要員としてプロジェクトに残るケースも多くあります。開発エンジニアと比べて契約期間が長くなるケースが多いこともインフラエンジニアの特徴です。
ただし、インフラエンジニアは業務の特性上、持ち帰りで対応することはほとんどありません。基本的には客先に常駐して業務を行うことが一般的です。最近ではクラウド系の案件も出回ってきており、自宅で業務を行うケースも少しずつ増えてきていますが、セキュリティ的な要件等で社外に仕事を持ち出すことを禁じているケースが多いです。
フェーズによって異なるインフラエンジニアの仕事と単価相場
インフラエンジニアの具体的な業務内容について説明します。インフラエンジニアといえどフェーズ(工程)によって求められるスキルが異なります。実際のフェーズは以下のように進んでいきますが、要件定義や基本設計など上流に行けばいくほど高いスキルが要求され、その分報酬も上がっていきます。
フェーズ | 単価 | 作業概要 |
要件定義 | 80〜100万 | クライアントの要望を応えるためにはどのようなシステムが必要なのか。どのようなシステムを開発するかなど要求事項を網羅的に定義するフェーズ。要件定義が案件のスタートとなります。 |
基本設計 | 70〜90万 | 要件定義の内容をベースにしながら、詳細設計が可能になるレベルまで設計する。作るものの輪郭を中心に設計することから、外部設計とも呼ばれます。 |
詳細設計 | 55〜70万 | 基本設計の内容をベースに、実際の構築が可能な状態にするまで細かなレベルで設計する。機器に入れ込む様々なパラメーターや数値情報まで落とし込みます。 |
構築 | 40〜60万 | 詳細設計フェーズで作ったパラメーターシートや手順書をベースに、実際のサーバーやネットワーク機器に設定情報を入れ込んでいきます。 |
単体試験 | 60〜80万 40〜55万 |
設定を入れ込んだサーバーやネットワーク機器が正常に動作するか確認するかを単体で行う試験。 |
結合試験 | 60〜80万 40〜55万 |
システムは単体ではなく複数のサーバーやネットワーク機器との組み合わせになることがほとんどです。そう言ったモジュールを結合して正常に動作するかを試験するフェーズ。 |
総合試験 | 60〜80万 40〜55万 |
インフラ側で構築した環境と、開発側で作り上げたアプリケーションをを組み合わせ、実際のシステム全体として連動して正常に動作するか確認する試験。 |
- 試験フェーズの単価は、試験する項目を考えてテスト仕様書に纏められる上流エンジニアと、決められたテスト仕様書に応じてテストしていくだけのエンジニアで単価が異なります。
- このような工程は、開発工程でも同じようにあります。
- ここで説明しているのは「ウォーターフォール型開発」と言われる手法です。川が上から下に向かって段々と流れていくように、工程が段々と進んでシステムが仕上がっていく様子をとらえてこう呼ばれています。
このような工程を経て作り上げられたシステムは運用チームに引き渡されるのですが、運用の中でもいくつかの工程に分かれています。
ポジション | 単価 | 作業概要 |
三次対応 | 70〜90万 | 二次対応チームで解決できなかった問題を解決するためーのチームで、一般的にはそのシステムを開発して仕様に精通しているエンジニアが対応します。このフェーズになって日々対応に追われることはあまりなく(対応に追われていたら大変なシステムです)一般的には他のプロジェクトを抱えながら、何か問題があった際に対応するスタンスです。 |
二次対応 | 55〜70万 | 一次対応チームから受けた障害内容を切り分け・分析して障害解決に導くポジションです。システム全体を理解しており、使用されている技術に精通している必要があります。 |
一次対応 | 35〜45万 | 障害が発生したアラードがなると、その障害内容に応じてエンジニアに取り次いだり顧客に報告する業務です。障害内容によっては、一次対応チームで作業を行うケースもあります。 電話やメールなどが主業務になりますので、特段の技術力は必要はなくコミュニケーション力があり、夜間対応が可能な方であれば参画できるフェーズです。 |
インフラエンジニア(フリーランス)は未経験者から挑戦可能?
全くの未経験でフリーランスとしてインフラエンジニアになるのは正直難しいです。理由としては、そもそも未経験でも対応できるフェーズが非常に少なく、その少ない枠はエージェント会社の正社員の新人エンジニアで埋められてしまうためです。
インフラエンジニアとして順調にステップできるモデルケースは、入社して約2,3ヶ月間、一通りのインフラ研修(サーバ・ネットワーク)を受講し、その後先輩のいる構築や運用現場に配属。先輩エンジニアの補佐について、現場や業務の作法を覚えつつ、徐々に一人で運用、構築、設計ができるようになっていくというものです。
LPICやCCNAなどの資格を独学で取得してチャレンジするケースもありますが、インフラエンジニアの場合、特に作法というのが重要で、その作法は現場でしか教えてもらえません。
フリーランスで仮にそう言った現場に参画できたとしても、たまたま面倒見の良い方が現場にいれば作法を教えてもらえるかもしれませんが、自社の社員でもないフリーランスに丁寧に教えてくれる方はそうそう見つからないと思います。
また、技術力がなくても対応可能な一次対応フェーズの運用業務から参画する手段はあります。一次対応フェーズでは技術力はほとんど必要なくIT用語が理解できる程度でOK、コミュニケーション力と夜間対応が可能であればエントリーは可能です。(インフラは24時間動き続けるものですから、一次対応の運用者は24/365と言って交代制の勤務形態を取るケースが多いです)
しかし、一次対応フェーズで身に付けられるスキルはあまりない上に、エンジニアとしての業務ほとんどありませんので、向上心の高い方ほど参画したもののすぐに嫌になって辞めてしまうというトラブルが起きます。
一次対応業務が一人称で出来る様になるまで数ヶ月必要で、その期間はクライアントが教育をかけてくれますが、その数ヶ月で嫌になって辞めてしまうというケースが絶えないのです。当然クライアントは数ヶ月の教育費用とエンジニアの人件費が無駄になりますから、エージェントに対してクレームが入ってしまうことになります。
インフラエンジニアとしてフリーランスに挑戦するのであれば、少なくとも3〜5年は社員エンジニアとして実績を積んだ上で、フリーランスに挑戦することをお勧めします。