エージェント会社のウェブサイトを訪れると、保有案件数1万件とか3万件などと信じられない数の案件数をPRされているのをよく見かけますね。ウェブサイト上で案件を探せるデータベースがあるサイトもありますが、そのデータベースにも大量の案件が掲載されています。
これだけ豊富な案件をもっているのであれば、このエージェントに登録すれば自分の理想に合う案件に就けると期待しますよね。
しかし話を進めていくと、全く商談が進まなかったり、商談が進んでいく過程で説明で聞いていたことと違う話が出てきて混乱するケースが非常に多くあります。
業界的なぶっちゃけトークになりますが、結論から言えば大量の案件の中でエージェント会社がグリップ出来ている案件なんてほとんどありません。実際のところ、グリップ出来ている案件を数えたら、小規模のエージェントであれば数件、大規模なエージェントでも数十から数百もあれば良い方だと思います。
これが現実です。
では、なんで過剰広告のような表現がまかり通っているのか、何をもって保有案件数と言っているか?
こんな疑問について今回はお話しします。
エージェントが保有する案件数の裏側
案件には受注確度が高いものと低いものがあるよ
なぜそういった問題が発生してしまうかというと、まず、どんな分野でも同じだと思いますが、営業的な観点で仕事を取る際に受注確度というものがあります。エージェント会社が持つフリーランス案件と呼ばれるものの中にもエージェント会社からみた受注確度というものがあります。
エージェント会社によって考え方が異なりますが、私の場合は以下のように考えてます。
フリーランス営業の案件受注確度の目安
確度S案件
自社の体制枠として顧客から既に発注を頂いている。あとはエンジニアをアサインするのみで、エンジニアと顧客との顔合わせも不要。完全に自社請け案件なので、フリーランスとの登録面談時の意思確認、または現場リーダーとの顔合わせで成約に至ります。
決定率:最高に高い
確度A案件
自社チーム枠として引き合いを頂いており、対応可能なエンジニアが見つかれば顧客提案して受注をいただける状態。エージェント会社の体制枠として顧客面談するため、体制のリーダーから現場状況はリアルにヒアリングできますし、個々のフリーランスエンジニアの能力というよりもエージェントの提案力で確定するケースが多く、非常に確度は高い案件。
確度S案件との違いは、エンジニアが確定してから発注となるため、突然の予算縮小など大どんでん返しを食らう可能性もゼロではない。
決定率:高い
確度B案件
現場の顧客担当から引き合いを頂いているが、自社体制の増員ではない案件。顧客は複数社のエージェント会社に声をかけているため、自社枠としては完全に確保は出来ていません。とは言いつつ、現場の担当とエージェントが直接話せる関係があるので、事前のヒアリングもできますし、営業と現場担当の関係次第では決定率は高まります。
決定率:中〜高い
確度C案件
顧客の調達部門から案件配信で流れてきた案件。
調達部門の担当者に聞けば、案件の概要は教えてくれるけど、具体的な体制、状況、今起きてる問題などは共有してもらえません。(調達部門の方はそこまで分かっていないです)案件の詳細は面談時に初めて聞けるレベルの引き合いなので、当然エージェントは案件をグリップできているわけではないですし、面談の合格率も高くはありません。
決定率:中
確度D案件
確度A.B.Cのような案件を、同業のパートナー会社を介して紹介された案件。パートナー会社も現場で体制を「持っている」・「持っていない」があるので、確度が読みづらく、そもそもエージェント会社はどんな現場でどんな人たちが働いていて、どんな状況なのか案件を理解していないし、現場に直接話を聞くことも出来ない関係の案件。とは言いつつ、こういった案件の中にはその同業パートナーとしては確度S案件も含まれていますので、稀に当たり案件であるケースもあります。
決定率:低い
確度E(通称ゴミ案件)
同業のパートナー会社がメールで配信している案件を自社案件のように見せかけているだけ。この場合エージェント会社は顧客がどこであるかも理解していないし、どんな会社が介在しているかも理解していない。決定したとしても中間で介在するエージェント会社が複数社になることもあり、それぞれがマージンを抜くためエンジニアの単価に見合った作業が与えられないケースもある。
決定率:低い(ほとんど決まらない)
なお、エージェント会社の営業を行っていると、毎日確度E案件が数百〜数千とメールで流れてきます。エンジニアの配属先現場が決まらないと、この確度Eのゴミのような案件からエンジニアのスキルに合う案件を探し出して紹介されますし、客を持っていない営業マンにあたるとそもそも確度Eの案件しか持ち合わせていないため、ゴミ案件ばかりを紹介されることになります。
本来自社案件と言って良いのは確度SとAのみ。多めに見て確度Bが許されるレベル
個人的に自社案件と呼べるのは確度Sの案件もしくは確度Aの案件のみであって、B以下は自社案件と言えるものではありません。そもそも自社体制として参画できる案件ではありませんからね。
B、Cも直接の顧客から頂いた案件であることを考慮すれば直受案件であることは間違いないですが、グリップ出来ているかといえば全くグリップは出来ていないです。とは言いつつ、現場顧客と直接交渉ができることから、Bも自社案件と言っても良いのかもしれません。
エージェント会社にフリーランス登録すると、エージェントが保有している案件の中から希望に合いそうな案件を紹介してくれるのですが、実はそのほとんどがエージェントが抱えている案件ではなく、他のエージェントが保有している案件を自社の案件と見せかけて紹介しているだけだったりするケースがあります。
この業界ではエージェント会社の営業間で双方の案件共有をしており、そのような案件をあたかも自社案件として見せかけているだけなのですね。ちなみに案件を共有しているエージェント会社の事をパートナー会社と呼びます。
エージェント会社は大小合わせるととんでもない数の会社がありますので、そういったパートナー会社の案件をかき集めれば1万とでも3万とでも表現することができるのです。
ですので、各エージェント会社が大量の案件を保有しているように見えますが、実際フタを開けてみると他のエージェント会社でも紹介している同じ案件でグリップのできていない案件を数えているケースがほとんどなのですよね。
登録案件といえば登録案件なのかもしれませんが、非常に悩ましい現実ですよね。
確度D以下の案件に巻き込まれないようにするために
最後に確度Dや確度Eなどのゴミのような案件に巻き込まれないようにするためには、案件説明時には以下の質問を投げかけてみてください
「御社の社員さんはそのプロジェクトに何名ほど参画されているのですか?」
少なくとも社員さんが参画しているプロジェクトであれば、確度S、A、Bの優良案件である可能性が高くなります。
プロジェクトには社員は参画していないけど、同じ現場にチームにメンバーが居るといった回答を受けたのであれば確度Cもしくは、エンジニアが配属している現場の担当からの紹介で別案件の担当者から依頼を受けるケース(確度B)でしょう。
現場に社員がいないと答えた時点で、C、D、Eとなります。
現場に社員がいない案件は参画後のトラブル率も高くなりますので、可能な限り避けた方が良いです。
以上、エージェントのウェブサイトに掲載されている登録案件数の実態についてお話しさせていただきました。