コロナウイルスによる生活様式の変化などで、さまざまな業界が良くも悪くも影響を受けています。悪い影響は飲食が顕著でしょう。逆に、巣ごもり需要で模型業界などコロナで売り上げが伸びているところもあります。
もちろん、IT業界とそこで働くエンジニアも大きな影響を受けているんです。
今回はそんなコロナ禍におけるIT業界の傾向と、コロナ禍のエンジニアの転職活動のポイントについて紹介します。
コロナ禍でIT業界はどう変化している?
IT業界がコロナ禍の影響を受けている、というイメージは業界外の人には無いかもしれません。エンジニアとして働いていても自覚しにくい部分もあるでしょう。まずは、そんなコロナ禍のIT業界の傾向について紹介します。
リモートワークが増加
IT業界は、いち早くリモートワークを導入した業界と言っても過言ではないでしょう。チームワークが大切な仕事ではあるものの、ウォーターフォール型の分業体制なので離れていても報連相さえしっかり取れていれば開発自体に問題はありません。
最初はみんな不慣れで悪影響もあったでしょうが、最近はすっかり慣れてきている人が増えた印象があります。
コロナが落ち着いた後も、IT業界では一部リモート化が当たり前になるという見方も強いです。
また、エンジニアの転職活動の動機として「弊社はリモート化できていないため」というのも生まれてきました。
IT・デジタル需要の加速
コロナ禍により、さまざまな業界・企業でリモートワークが推進されました。リモートでなくとも、人と人とが接する機会を減らす方向で社会は動いています。わかりやすい例は、セブンイレブンがセミセルフレジを導入したことでしょうか。
離れていても飲み会ができるWebサービスなどが生まれ、それを利用する人が増えたりもしています。
このように、企業レベル・個人レベルとに問わず、IT需要・デジタル需要がコロナによって加速しました。
倒産する会社も多い
ここまでの内容だと、IT業界はコロナ禍でむしろ順調だと感じるかもしれません。実際、業界全体で見れば間違いではないでしょう。実際、他の業界に比べれば倒産率・失業率は低いです。
ただ、コロナにより、倒産する会社が増えているというのも事実なんですよ。
チャットプラス株式会社の調査によると、IT・通信業界でコロナの影響により倒産・失業があったと答えた人は62.4%とのことです。
これらのIT技術自体の需要が増えたことと、リモートワークが当たり前のようになっていること、倒産する企業も多いことが転職市場に影響を与えています。
売り手市場が加速傾向
ここからは、転職に関わる話をしましょう。
コロナ禍におけるIT業界の有効求人倍率は、とても高いです。2020年下半期には、IT業界の有効求人倍率が5.0倍を超えた月もありました。一方、商社や小売などのほとんどの業界は1.0倍または、それ以下です。
さらに、経産省は2025年にITの人材不足が約43万人にまで広がる可能性があると発表しています。
エンジニアの需要は、とても高いです。
そのため、元々売り手市場だったエンジニアの転職市場は、コロナによってますます売り手市場化が加速しています。ある程度の技術レベルを持っているエンジニアであれば、求人を選びやすい状況です。
ある意味、チャンスだと言えるでしょう。
技術レベルによって需要に格差が生まれている
エンジニアは現在売り手市場だと述べました。
一方、エンジニアの技術レベルによって需要格差が生まれています。そのため、即戦力にならない未経験者や初級のエンジニアは、望む待遇を得づらい状況にあると言えるでしょう。
ただ、これは後ほど語りますが、未経験者や初級のエンジニアにもチャンスはあります。コロナ禍で転職は難しいかもしれないと悲観的にならず、じっくりと転職について考えましょう。
コロナ禍のエンジニアの転職市場の傾向
コロナ禍におけるIT業界の動向や傾向について語りました。一部、エンジニアの転職市場に関わる項目もありましたね。今度は、もう少し本格的にコロナ禍におけるエンジニアの転職市場の傾向について紹介します。
初転職をする人は減少傾向
エンジニアのキャリア支援を行うレバテックの調査によると、初転職をする人の割合が2019年と比べ、2020年は5.5%ほど減っているとのことです。
コロナ禍において転職は難しいというイメージが、世間一般にはあります。初の転職をしたいと思っている人が、一旦市場動向を見守ろうとしているのでしょう。初転職はキャリア形成に大きな影響を与えますからね。
転職エージェントなどに登録する人は増えた
初転職をする人が減った一方で、キャリア支援サービスに登録する人は増えています。同じくレバテックの調査によると、特に20代の登録者が増えているとのことです。20代前半は昨対比5.8%ほどアップしており、20代後半も少しアップしています。
特に若い人の間で「転職を考える人」が増えているということです。
ここまでの情報を総合すると、転職を考えてサービスに登録して求人情報などをチェックしつつ、転職市場の動向を見守る動きが活発ということですね。
不満から転職する人は減少傾向
エンジニアの転職理由として最も多いのは、キャリアアップです。それはコロナ禍以前と同じくトップであり、むしろコロナ禍以降そのような理由で転職を考える人が増えています。業界全体ではコロナで需要が伸びているということが、転職理由の前向きさに影響をしているのかもしれません。
さらに、コロナ禍におけるIT業界のビジネスモデルの増加なども影響しているでしょう。
一方、以前は多かった仕事内容や会社への不満という理由で転職する人は、減少傾向にあります。
これは、リモートワークが増えたことが影響しているのではないでしょうか。会社に行く機会が減り、会議の機会が減ったことで不満が緩和されていると考えられます。
求人に記載する給料額が高くなっている
コロナ禍におけるエンジニアの転職市場は、売り手市場です。中級程度のスキルを持ったエンジニアの需要も、着々と伸びています。
そのため、求人で提示される給料額が高くなっているんです。日経TECHによると、まだまだ新型コロナの面影も無かった2020年1月~3月あたりの平均月給額は、28万2000円程度でした。
4月以降から12月にかけてどんどんと平均月給額が増えていき、12月には29万2000円程度にまで上昇しています。1年で平均が1万円伸びたというのは、大きな変化です。
2021年に入ってからの求人の傾向を見てみても、記載される給料の額は高めになっています。今後もどんどん平均給料額は伸びていくと言われているため、給料をアップさせたいならこれからがチャンスなのかもしれません。
コロナ禍のエンジニアの転職活動に必要とされること
ここまでで、エンジニアの転職市場がコロナの影響を受けて変化していることがわかったのではないでしょうか。市場が変化しているからには、エンジニアの転職活動で必要とされることも変化しているはずですよね。そこで最後に、コロナ禍におけるエンジニアの転職活動のポイントを紹介しましょう。
事業の変化への対応力や提案力
IT企業の中には、コロナ禍の影響からか事業戦略を見直す企業も増えてきています。サービス提供の仕方などが変わり、新たなビジネスモデルも台頭してきましたからね。コロナ禍で、多くの企業が事業を変化させなくてはならなくなっています。
今求められているのは、そんな事業の変化に対する対応力と提案力です。
事業が変化すれば、エンジニアの仕事にも影響があります。それに対応できなければ、いずれ仕事についていけなくなるでしょう。
さらに、一歩踏み込んでどのように業務改革をすれば良いのかなどの提案ができる人も、求められています。エンジニア自らがエンジニアの業務改革を担える方が、企業にとっては都合が良いです。
もっと言えば、経営戦略まで担えるマネージャータイプのエンジニアの需要も伸びています。
ただ、マネージャーになれというわけではありません。
転職時、対応力と提案力をしっかりアピールしておきましょう。
エンジニアとして付加価値を付ける
事業変化への提案力があるエンジニアが求められていると述べましたが、それ以外にも付加価値のあるエンジニアの需要が大きいです。売り手市場ではあるものの、スキルレベルなどによって需要格差がある以上は、のんびり構えてもいられません。
新たな言語を習得したり、設計について学んだり、営業スキルを有していたりといった付加価値を付けることをおすすめします。
今から付けるのも良いですし、自身が既に持っているエンジニアとしての付加価値を掘り起こすのも良いでしょう。
自己分析を徹底的に行えば、何かひとつ付加価値があるかもしれません。
求人先企業の体力をしっかり見極める
コロナ禍において求人を積極的に出す企業は、両極端になりがちです。
具体的には、企業体力が大きく余裕がある会社と、余裕が無くなったことで焦って即戦力を確保しようとする会社の二極化している傾向があります。
前者の場合はエンジニアの教育などを行う余裕もあるでしょうが、後者の場合はありません。リモートワークで教育が難しくなっていることもあるうえに、企業体力まで無くなれば即戦力以外は雇わないでしょう。
さらに、企業体力が無く焦っている会社は今後倒産する可能性もあります。
コロナ禍の今転職活動をするのであれば、求人先企業の体力をしっかりと見極めることが大切です。
コロナ禍のエンジニアの転職は慎重に!
コロナ禍で、IT業界は少なからず影響を受けています。業務改革を迫られる企業が増えたり、体力を無くす企業が増えたりとさまざまです。一方で、業界全体で見れば成長していると捉えることもできます。
判然としないコロナ禍におけるエンジニアの転職市場を、しっかりと見極める必要があるでしょう。
今が転職のチャンスと言えるかもしれませんが、焦って転職をすると失敗しかねません。慎重に考えて、転職活動を行いましょう。