多くの会社員にとって、管理職は目指すべきところとして長年語られてきました。近年は管理職になりたくないという人も、業界・職種に関係なく増えていますね。
エンジニアにとっても、管理職になるべきかどうかは盛んに語られる議題です。専門職と管理職、スペシャリストとマネージャーと言い換えることもできます。どちらの立場にも、良さがあるでしょう。
そこで今回は、エンジニアが管理職になるメリット・デメリットや、管理職に求められるスキルなどについて紹介します。
エンジニアが管理職になるメリットとデメリット
管理職と言えば、上流工程に関わり給料が増え、会社内での立場も上がると良いことが多いように思えます。ただ、エンジニアの管理職にはメリットもデメリットも両方多いです。そこでまずは、エンジニアが管理職になるメリットとデメリットをそれぞれ簡単に紹介します。
エンジニアが管理職になるメリット
- 給料が上がる
- 専門職より経営層に近い視点を持てる
- プロジェクト全体を見渡すことができる
- 意思決定ができる
管理職になることで給料が上がるというのは、あくまでも表面的なメリットに過ぎません。もちろん、それ自体もとても大きなメリットです。より多くのお金を稼ぎたいという人には、合うのかもしれません。
ただ、エンジニアの管理職の最も大きなメリットは他にあるのではないでしょうか。
まず、より経営層に近い視点を持って仕事に取り組める点です。エンジニアのマネージャー職の中には、経営に片足を突っ込むようなものも少なくありません。将来的に経営サイドを目指したり、起業独立を目指すならその足がかりとして管理職経験を積むのも良いでしょう。
さらに、管理職になるとプロジェクト全体を見渡し、意思決定をすることができます。専門職は自分の関わる工程に従事するもので、全体については見えない部分もあるでしょう。プロジェクトの全体をしっかり把握したい人や、他人の意思に振り回されたくない人には合います。
エンジニアが管理職になるデメリット
- 時間的な拘束が増える
- 管理職には年俸制を導入する企業も多い
- プログラミングをする機会は減る
- 勉強は継続しないといけない
- 特定の技術を極めることができない
エンジニアが管理職になると、時間的な拘束が増えます。単純に、管理業務がハードなためです。
さらに、管理職には年俸制を導入する企業もあります。管理職ということで、それなりに高めの年俸を設定してくれるケースが多いですが、どれだけ活躍してもその年のボーナスなどは変動しないというデメリットもあるんです。
ちなみに、年俸制でも週40時間、1日8時間を超過した「残業分」は残業手当を支払わなければならないという決まりがあります。ところが、実際は年俸だからと残業は払わなくても良いと考える企業も少なくありません。
年俸制も一長一短です。
そして、管理職になるとプログラミングをする機会が減ります。プログラミングが好きな人には、向きません。それでいて、最新技術にアンテナを張り技術を学ぶこと自体は続ける必要があります。
管理職はチームがこれからどういった技術に特化していくか、注力していくかを判断するポジションでもありますから、当然技術動向や知識も幅広く必要になります。
また、特定の技術を極めたい人にも管理職は不向きです。マネージャーは、さまざまな技術分野に対する知識を持つ徹底したゼネラリストであることを求められます。
管理職か専門職か、どちらを選ぶかを決めるための4つの判断方法
エンジニアにとって、管理職にはメリットとデメリットの両方があることを説明してきました。一長一短で、メリット・デメリットのどちらがより大きいということも一概には言えません。そこで、スペシャリストとマネージャーのどちらを選ぶかを決めるための判断方法を4つ紹介しましょう。
管理職と専門職の違いを明確に知る
どちらかを選ぶためには、管理職と専門職の違いを知っておくことが大切です。
管理職は、文字通りプロジェクトや職場全体などを管理する仕事のこと。エンジニアにはさまざまな「マネジメント系」のキャリアがあります。プロジェクトマネージャー、テクニカルディレクター、エンジニアリングマネージャーなどが一般的ですね。
他にも、時代と共にマネジメント系のエンジニア職は増えています。データサイエンティストなども、IT技術を積極的に使う仕事ではありますが、どちらかと言えば管理側と言えるでしょう。
いずれにも共通しているのが、経営者的な視点を持つことが重要だということです。後は、ここまで説明してきたメリットとデメリットが管理職の特徴だと言えます。
一方専門職は、特定の技術分野に特化したスペシャリストです。IT技術の進化とともに、そのキャリアも多様化しています。
クラウドに特化したインフラエンジニアが求められたり、AIやAR/VRに特化したエンジニアが求められたりとさまざまです。興味がある分野を徹底的に極めることができるのがメリットであり、それ以外の分野に関しては手薄になるのがデメリットでもあります。
一昔前はエンジニアのキャリアと言えばマネージャーでしたが、近年はスペシャリストの需要が高く、キャリアの多様化によりスペシャリストでも上を目指せるんです。
つまり、スペシャリストでも給料アップはできるということ。フリーランスで稼ぎまくっているエンジニアの多くは、スペシャリストですしね。
スペシャリストとマネージャーとの違いは、「視点」と「意思決定力」です。
技術者としての視点か、経営者の視点か。意思決定力が弱い代わりに責任も比較的軽いか、高い意思決定力を持つ代わりに責任が重いのか。
どちらが良いのかを、しっかり考えましょう。
自分のスキルや性格・適正を洗い出す
管理職と専門職との違いを理解したら、今度は自分のスキルや性格といった適正を洗い出してみてください。
現状扱えるプログラミング言語、知識のある分野、現在勉強していることを紙に書き出しましょう。そうしたら、自身の業務経験を棚卸しし、その業務を遂行するのに必要とされるスキルを調べてみてください。そのスキルも、自分のスキルとして加えましょう。
性格に関しては、自覚している部分と自覚していない部分とがあるはずです。自覚していない部分は、人に聞くことで洗い出すことができます。
そうして洗い出したスキルや性格が、あなたの適正です。
後ほど、エンジニアの管理職に求められるスキルについて紹介します。それらと照らし合わせてみると自分にどちらが向いているかがわかります。
将来やりたいことについて考える
将来何をやりたいのかを考えることで、自然とマネージャーかスペシャリストかを決めることができる場合があります。
どんな自分に憧れるのか、と言い換えることもできるでしょう。
人をたくさん従えている姿をイメージした人は、管理職の方が好みに合う可能性が高いです。専門職は突き詰めたとしても、指示を受けて働く側であることに変わりはありません。人を動かす仕事に憧れるなら、管理職を目指しましょう。
技術をとことん追求して職人的に働く姿をイメージした人は、専門職の方が好みに合う可能性が高いです。管理職になると、一つの技術を追うことはできません。
他にも、将来やりたいことについて色々と考えてみてください。
そうして、興味が向く方を選びましょう。
向いていて興味のある方を選ぶ
自分に合う仕事は何かというのは、社会人にとって永遠のテーマでもあります。
ひとつの考え方として言われることがあるのは、適正があり興味もある仕事が自分に一番向いているということです。
適正が無ければ、凡人レベルになるのにも大きな努力を必要とします。凡人と言われる人たちから頭一つ抜けるには、適正がある人の何倍もの努力を要するでしょう。努力しても、そうなれない可能性すらあります。
だからといって、興味がない仕事は努力したいという気力が湧きにくいです。適正があったとしても、努力できなければ成長は頭打ちしてしまいます。
そのため向いていて興味のある仕事が一番自分に合うのではないか、という考え方があるんです。
エンジニアの管理職と専門職との分岐も、そのように適正と興味が一致する方を選ぶと良いでしょう。
エンジニアの管理職に求められるスキルとは?
エンジニアが専門職か管理職かを選ぶには、適正と興味を判断することが大切だと語りました。興味は自己分析で判断できますが、適正はエンジニアの管理職に求められるスキルを知らなければ判断できません。そこで、管理職に求められるスキルを4つ簡単に説明しましょう。
マネジメント能力
まず、エンジニアの管理職にはマネジメント能力が求められます。管理職の仕事も職種ごとにさまざまです。ただ、プロジェクトの進捗状況を管理したり業務の振り分けを管理したりといった管理業務は、どの職種でも切り離せません。
そのため、全体をしっかりと見渡して状況を整理し、管理するマネジメント能力が求められます。
コミュ力とリーダーシップ
エンジニアの管理職は、言い換えればマネージャーです。運動部のマネージャーが選手たちとコミュニケーションを取るように、仕事におけるマネージャーもチームメイトとのコミュニケーションが必須になります。
さらには、管理職になると顧客と関わる機会が増えるんです。顧客だけではありません。会社の経営部隊、経理部隊などさまざまな部署との折衝ごとが増えます。コミュニケーション能力が高くなければ、できない仕事です。
そのうえ、メンバーの士気を高めるなどのリーダーシップも必要になります。
問題解決能力
エンジニアは専門職でも問題解決能力が求められる仕事ですが、管理職にはさらに高い問題解決能力が求められます。
専門職に求められるのは、エラーに対処するための問題解決能力です。管理職には、エラーの対処以外にもプロジェクト全体で起きるさまざまなトラブルや問題に対処し、解決する能力が求められます。
そこには高い分析力と論理的判断力、そして決断力も含まれるでしょう。
経営とITとを絡めた知識・考え方
エンジニアの管理職の中には、経営戦略にITを利用する立場もあります。それ以外の仕事だとしても、経営部隊などと関わる機会も増え、経営側に片足を突っ込むことになるんです。そのため、経営戦略について学ぶ必要があります。
それも、エンジニアに求められるのは単なる経営の知識ではありません。ITを利用してどのように経営に活かすのかという、経営とITとを絡めた知識と考え方です。
これらは現在の適正というよりも、今後学んで身につけていかなければならないことだと言えます。
管理職・専門職どっちを選ぶにしても転職エージェントを利用しよう
エンジニアは現在、管理職でも専門職でもキャリアアップができるようになっているんです。
判断する基準は、「視点」「意思決定力」という両者の違いと、どちらに適正・興味があるのかということがあります。適正は問題解決能力やマネジメント能力といった、管理職に求められるスキルから図りましょう。
また、どちらを選んでも転職が必要になる可能性があります。それぞれに求められる経験を得るために、足がかりが必要ですから。
そこで、迷ったときは転職エージェントを利用することをおすすめします。転職エージェントに判断を手伝ってもらい、転職が必要ならそのまま転職活動をはじめるとスムーズに進むのではないでしょうか。