近年は、20代から転職をする人がどの業界・職種でも増えていると言われています。20代のエンジニアの中にも、転職したいと思っている人は多いのではないでしょうか。
ただ、転職には年代別に知っておくべきことがいくつかあります。これを知るのと知らないのとで、転職の成功率は変わりますよ。
そこで今回は、20代エンジニアが転職を成功させるために知っておくべきことを紹介しましょう。
20代エンジニアの転職率は高い! よくある転職理由や転職の不安は?
20代エンジニアの転職率は、他の年代より低いものの昔よりは高くなっています。そこでまずは、20代エンジニアの転職率と、よくある転職理由や転職の際に抱えがちな不安について紹介しましょう。
20代エンジニアの転職率
独立行政法人情報処理推進機構が発行した「IT人材白書2015」では、以下のようになっていました。
- 20代:転職なし(75.5%)、1回(15.7%)、2回(4.9%)、3回以上(3.9%)
- 30代:転職なし(53.1%)、1回(22.4%)、2回(11.8%)、3回以上(12.7%)
- 40代:転職なし(45.1%)、1回(17.2%)、2回(15.4%)、3回以上(22.3%)
- 50代:転職なし(41.6%)、1回(19.8%)、2回(16.8%)、3回以上(21.8%)
どの年代も転職なしの人が一番多いですね。20代は転職なしが75.5%と、結構高いです。1回経験している人は15.7%とこれも高めで、2回以上経験している人は少数派ということになります。
さらにIT人材白書を年を追って見ていくと、年々エンジニア全体の転職率や転職意思決定率が高くなっていることがわかるんです。
年代別に示した公的資料は上記が比較的新しいものとなりますが、現在は転職を1回経験する人の数はもっと多いと思って良いでしょう。
一方で、エンジニアに限定しなかった場合、20代の転職率は約30%だと言われています。
また、エンジニア向けキャリア支援サービスのレバテックの調査によると、2020年は例年より転職エージェントに登録するエンジニアの数が増えているとのことです。特に20代前半の場合は昨対比5.8%アップとなっています。転職の意思がある20代エンジニアの数はかなり多いと言えるのではないでしょうか。
20代エンジニアによくある転職理由
- 給料を上げたい
- 自分のやりたい仕事をやりたい
- 労働時間を減らしたい
- 上司への不満
- スキルアップがしたい
- もっと自由な働き方がしたい
- クリエイティブな仕事がしたい
上記は、IT人材白書2020で示されたエンジニアの転職理由です。割合が高いものから順に箇条書きしました。
最も割合が高かったのは、給料アップです。IT人材白書2020では先端IT従事者と、そうではないIT従事者とを比較していますが、どちらも給料アップを理由にする人が多いです。
次に多いのは、自分のやりたい仕事ができる会社や仕事に就きたいという理由となっています。
ただ、上記は全年代の転職理由です。
それでは、20代に限定するとどうなるでしょうか。
- スキルアップ/キャリアアップのため
- 職場が自分に合わなかったため
- 給料が相場より低いため
- あまりに忙しすぎるため
20代はまだまだ経験が浅い人もいるので、「もっとこういう仕事がしたい」という要望から転職する人は比較的少ない傾向があります。多いのは、3年以上働いて「そろそろスキルアップ/キャリアアップを視野に入れたい」と思い、転職を志す人です。
早くに転職を決意する人の理由としては、職場が合わないことや給料が低いこと、ブラックな職場であることが挙げられる傾向があります。
自分の人生を長い目で俯瞰して考え、自分の転職理由は現状叶えられる望みなのかについてじっくり考える必要があるかもしれませんね。
20代前半が「もっとクリエイティブな仕事をしたい」と思っても、そのためにキャリアの積み上げが必要になることもありますから。
20代エンジニアによくある転職の不安
- 自分のスキルに不安がある
- 実務経験の少なさが不安
- 新しい環境に馴染めるか不安
上記3つが、20代エンジニアによくある転職の不安です。転職エージェント探しのアドバイザーサイト「キャリズム」の調査では、スキルに不安があるという人が51%、実務経験に不安がある人が49.5%、環境への不安が40%という結果になっています。
スキルや実務経験に関しては、20代ならまだ華々しくキャリアアップする段階ではなく、将来のキャリアのためにスキルと経験を積み上げていく段階なので、そこまで気にする必要はないでしょう。
自分の持つスキルと経験を客観的に把握し、的確にアピールできれば転職は十分可能です。入社1年目の場合は少し事情が変わりますが、第二新卒としてポテンシャル採用されることが多いため、大事なのはスキルより熱量だったりします。
環境に馴染めるかどうかという不安も、企業研究を徹底的に行うことで解消できる可能性もあるんです。
大切なのは、不安材料をどのように解消するかを考えること。
スキルと経験に不安があるのなら、効果的なアピール方法を探すことをおすすめします。環境に馴染めるか不安なら、なるべく自分に合った雰囲気・風土のある企業を選ぶ工夫をしましょう。
20代エンジニアは積極的に転職すべき?
転職を考えている20代エンジニアは多いですが、同時に考えているだけで実際に転職しないエンジニアも大勢います。そんな人たちの足かせとなっているのが、20代から転職するべきかどうかということです。そこで、積極的に転職するべき人の特徴と、慎重になるべき人の特徴を紹介しましょう。
積極的に転職すべき人
- エンジニアの仕事、技術に対する熱量のある人
- 今の職場にいてはスキルアップができないと感じる人
- キャリアを見据えて転職できる人
- エンジニアの仕事に興味がない人
20代のエンジニアの転職において、大切なのは熱量です。この熱量が、ポテンシャルとして企業に評価されます。それを示すのが、日頃の学習や資格の取得、仕事以外での制作実績などです。
エンジニアの仕事や、さまざまなIT技術についての興味関心が強く、自分で考えて学習などの行動に移せる人は転職に成功しやすいですよ。むしろ、将来的に自分の興味分野の仕事につくために転職したほうが良いこともあるでしょう。
残業が多すぎる、上司や職場全体に不満がありストレスが溜まりすぎるなどの理由から、今の職場にいるとスキルアップができないと判断した人は転職したほうが良いです。エンジニアは自分の時間を持ってインプットをしたり、学習したりすることがスキルアップに繋がります。
忙しすぎたりストレス過多だったり、スキルアップに対する補助制度が無かったり…。そのような職場に居続けてくすぶるよりは、転職してスキルアップを目指せる会社に就いたほうが良いです。
ただ、どんな場合でもキャリアを見据えて転職できる人でなければ、転職はおすすめできません。
エンジニアは、キャリア形成のために転職をせざるを得ないという場面に遭遇する可能性が高いです。そのため、30代・40代と段階的に転職回数が増える傾向があります。
20代のうちからキャリアを見据えた転職をしなければ、転職回数をいたずらに増やしてしまい、将来の転職活動に悪影響を与える可能性があるんです。
また、最後の項目に関しては「異業種転職をすべき人」だと言えます。エンジニアは、仕事に対する興味関心が無ければ続けることが難しい仕事です。興味関心が無ければ、意欲的に学習しようとはなかなか思えませんから。
異業種転職をする場合も、今のうちからキャリアを見据えて転職先を選んでおきましょう。
転職に慎重になるべき人
先述した特徴に全く当てはまらない人や、前向きな転職理由が何一つとして無い人は転職に慎重になったほうが良いです。
1年目の新卒社員は慎重になるべきじゃないのか、と思う人もいるでしょう。新卒1年目だとしても、ポテンシャルがありスキルアップやキャリアを見据えて転職する場合は企業に採用してもらえる可能性が高くなります。
20代エンジニアの転職で何よりも大切なのは、前向きさです。
近年、多くの企業が即戦力を求めています。そんな中、20代という比較的経験値の低い年代のエンジニアを雇う企業が期待するのは、成長できるかどうかです。
ネガティブな理由だけで転職活動をしている人に、企業は成長性を見出しません。働きながら、「もっとこういう仕事がしたい」「もっとこういう職場に転職したい」という気持ちが生まれるまで様子を見るのもアリです。
ただ、それでも転職したいという場合は、ネガティブな転職理由をポジティブに変換しましょう。
そのうえで、キャリアプランを形成して転職活動をすれば、転職成功する可能性もあります。
20代エンジニアが転職を成功させるためのポイント
ここまでさまざまなことを語ってきましたが、結局のところ、転職を成功させられるかは自分の工夫と努力次第です。ただ、どの方向に努力と工夫を行えばいいのかがわからない人もいるでしょう。そこで、20代エンジニアが転職を成功させるためのポイントをそれぞれ簡単に紹介します。
キャリアプランを描く
まずは、転職活動の設計図となるキャリアプランを描くことから始めましょう。職務経歴書や履歴書を書いたり、求人を見たりするより先に行うことが大切です。キャリアプランが判然としていない状態でそれらを行っても、自分に合う求人は見つかりませんし、求人先企業に合う履歴書は書けません。
キャリアプランを作成するには、これまでの経験と、これから経験したいことを棚卸しすることが大切です。
これまでの実務経験から何を学んだのか、これまで得てきたスキルは何かを自己分析します。次に、これからエンジニアとして何を経験していきたいのか、最終的にどのようなエンジニアになりたいのかを考えましょう。
最終的にと言っても、20代で考えたことは30代以降で変わる可能性があります。あくまでも、現時点でどのようなエンジニアになりたいのかを考えるということです。
そして、これまで得てきたものと、これからの願望に必要とされるスキルなどが噛み合うかどうかを探ります。噛み合うものを線で繋合わせていき、最初に繋いだものが次に目指すべきキャリアパスです。
そこから先は、その経験から得られるだろうスキルを調べ上げ、同じように線を繋いでいき、最終的に目指したいエンジニア像へと結びます。
このプロセスを踏むことで、転職活動の方針が決まりますよ。
現在の職場や仕事の不満点を洗い出す
キャリアプランを描いて決まるのは、「どのような経験が得られる会社に転職するべきか」ということです。
それだけだと、自分に合わない会社に転職してしまう可能性もあります。そこには、現状の不満を解決するための指標はありませんから。
そこで、次に行うべきは現在の職場や仕事に対する不満点の洗い出しです。そして、それらを優先して解決したい順に並べ替えます。その一番上にあるものが、求人選びで重視すべき項目です。
キャリアを第一に考えて求人をふるいにかけた後で、不満の解決ができる求人を選びましょう。
優先順位1位を解決できる求人を選び、そこからさらに絞り込むために優先順位2位を解決できるかどうかを選んでいくと、最終的にはキャリア的にも不満解消的にも自分に合う求人が残ります。
転職に関する情報を徹底的に集める
20代のエンジニアは、初転職の人も多いでしょう。前述したように、20代エンジニアの転職経験率は「なし」または「1回」が相場ですから。
そこで、転職に関する情報を集めましょう。IT業界の転職市場における傾向や、全業界共通の転職戦略などなど、とにかく転職に役立ちそうな情報は何でも集めておくことが大切です。
転職について知っておくと、転職市場での効果的な立ち回り方などがわかりますよ。
教育制度の充実度をチェック
20代のエンジニアにとって、教育制度の充実度は大切です。現在の会社の勤続年数が低い人は特に、重視するべきでしょう。
転職に際し、スキルに不安を覚える20代エンジニアが多いということを前述しましたね。その不安を解消してくれるのが、教育制度が充実している会社です。入社後にしっかりと教育を行い、スキルアップへの支援を行ってくれますから。
20代エンジニアの転職で最も怖いのは、熱量はあるのにスキルが身につかないということです。スキルが身につかないとキャリア形成にも悪影響を及ぼすので、ここは重視しておくべきでしょう。
業績の安定度をチェック
20代のうちから転職を2回経験する人が少ないということは、ある程度長く働くのが一般的ということです。特に20代はまだ専門性よりも、幅広い経験を積んでおくことが重視されますから、次回の転職までの間は他の年代よりも長くなります。
実際にスキルアップをしてキャリア形成に繋げようとすると、自然とそうなるんですよね。
長く安定して働くために、求人先企業の業績の安定度をしっかりとチェックしておきましょう。
特に、近年は新型コロナウイルスの影響で倒産するIT企業も増えています。そうでなくとも、日本の経済の動向的に「正社員が安定」とは言えなくなっているのが現状です。しっかりと業績をチェックしなければ、安定して働けない企業を選んでしまう可能性は昔より高くなっています。
20代は向上心のアピールが大事
ここまでも、何度か熱量という言葉を使って説明してきました。20代エンジニアの転職で重視されるのは、熱量です。即戦力が求められる昨今、熱量が乏しく成長性が無いと判断されると、なかなか雇ってくれません。
向上心と言い換えることもできるでしょう。
20代エンジニアの転職活動で熱心にアピールするべきなのは、向上心です。エンジニアの仕事やさまざまな技術に対する興味関心という熱量を持ち、実際に学習を行っているという向上心があることを選考書類や面接で伝えましょう。
そのために資格を取得したり、現在習得していない言語の学習をしたりするのも効果的です。
転職エージェントを頼ろう
転職市場を一人で戦うのは、おすすめしません。特に20代は初転職という人も多いでしょう。転職活動は、就職活動とは違うことが要求されます。求人の見方なども微妙に異なるんです。
そのような転職市場における戦い方が身についていないため、素直に転職エージェントを頼りましょう。
転職エージェントを利用すれば、キャリアアドバイザーの支援を得ることができます。キャリアプラン形成の手助けもしてくれますし、自分に合う求人探しや面接対策などに関するアドバイスもしてくれますよ。
20代エンジニアの転職は重要! じっくりと取り組もう
20代エンジニアの転職は、今後のキャリア形成に大きく影響を与えます。失敗すると、キャリア形成につまずいてしまい、他の人よりも歩みが遅くなるでしょう。成功すれば、歩みを早めることもできます。
自分が現状抱いている不満と、今後への展望を分析し、じっくり腰を据えて取り組みましょう。