30代は、どの業界や職種でも転職を考える人が増える傾向がある年代です。
特にエンジニアにとって、30代はキャリアの方向性を決定づける時期だと言えます。20代の頃はまだ変更もききやすいですが、30代で決めたキャリアの方向性を変えるのは困難です。
キャリアについてじっくり考え、転職する必要があります。
そこで今回は、30代エンジニアの転職を成功させる方法などについて、紹介しましょう。
30代エンジニアの転職率と転職成功率は?
独立行政法人情報処理推進機構が発行した「IT人材白書2015」では、エンジニアの転職率は以下のようになっています。
- 20代:転職なし(75.5%)、1回(15.7%)、2回(4.9%)、3回以上(3.9%)
- 30代:転職なし(53.1%)、1回(22.4%)、2回(11.8%)、3回以上(12.7%)
- 40代:転職なし(45.1%)、1回(17.2%)、2回(15.4%)、3回以上(22.3%)
- 50代:転職なし(41.6%)、1回(19.8%)、2回(16.8%)、3回以上(21.8%)
20代と比べ、30代になると転職をしたことがない人の割合がガクッと減っていることがわかりますね。同時に、2回以上転職する人の割合も急増しています。現在は2015年当時に比べ、世間一般的に転職に対する意識が高まっている傾向があるため、数値ももう少し伸びているかもしれません。
転職成功率も見てみましょう。
転職サイトのリクナビNEXTが、あらゆる職種の30代にアンケートを取っています。それによると、30代前半で転職を経験した人の中で、成功したと思うと答えた人は43.4%でした。
成功とは言えないと思うと回答した人が25.4%、どちらとも言えなという人が31.2%となっています。
成否が曖昧な人が多く、成功率は半数を下回っているということです。割合としては成功したという人が最も多いものの、成功したと言い切ることが難しいということがわかりますね。
胸を張って転職成功と言い切ることができるようになるには、じっくり戦略を練って転職活動を行う必要があるでしょう。
【経験者の場合】30代エンジニアの転職で求められること
30代エンジニアの転職は、じっくりと戦略を練らないといけないと先述しました。戦略を練るために、まずは転職の際30代エンジニアに何が求められるのかについて知っておきましょう。
即戦力になること
30代のエンジニアには、即戦力となることが求められています。20代の頃は「発展途上だけど自社で鍛えればいいか」と思ってくれることも多いです。ただ、30代となるとしっかりと経験を積んでいることが前提となります。そのため、教育前提の雇用はしないことがほとんどです。
ここで言う即戦力とは、「全ての業務をそつなくこなせること」や「その道のスペシャリストであること」ではありません。
即戦力というのは、一から十まで教えることなく、これまでの経験から自ら考えて行動し、培ったスキルを活かしてすぐに実務を行える人のことを指します。
キャリアに対する高い意識
30代エンジニアの転職では、これまで以上にキャリアに対して高い意識を持っていることが求められます。
30代は、多くの人にとってキャリア形成の分岐点です。ここで決めた方向性が、今後の人生を大きく左右します。そんな重大なことをしっかり考えていないということは、年齢の割に考えが浅いということになってしまうんです。
反論はあるかもしれませんが、少なくとも企業はそう判断する傾向があります。
30代の人が面接に来て、「これからやりたいことを探したい」と学生のようなことを言い出したとして、そのような人を雇いたいとは思わないでしょう。
自分の人生のために深く考え、高い意識を持つことが大切です。
ただ、それ以前に面接に受かるために必要なことなんですよ。
深く思考できること
キャリアに対する高い意識の項目で少し触れましたが、30代エンジニアには深く思考できることも求められます。
人によって人生経験には差があるものの、30代は一般的に「それなりに経験してきている」と見られる年代です。人生経験がそれなりにあるということは、それ相応の思考力を持っていることだと判断されます。なぜなら、深い思考力は人生経験の中で身に付くことが多いためです。
深い思考力を持っていないとなれば、経験が足りないと判断されます。
また、エンジニアは思考力が大切な仕事です。30代エンジニアには難しい案件も任せたい、と企業は考えます。マネジメント業務を任せることも、視野に入れているんです。
同年代の求職者がいた場合、しっかりとした思考力を持っていないほうが落とされます。
熱意
30代エンジニアが転職面接で落とされる理由として、「熱意が感じられない」というのがよく挙げられます。転職希望者の中には、技術を第一と考えて熱意などの精神面を軽視する人もいるんですが、それではいけません。
エンジニアというのは、技術も大切ですが、それ以上に仕事に対する熱意が大切な仕事です。熱意がある人の方が、新しい技術を貪欲に吸収します。仕事にも積極的に関わり、結果的に会社に貢献してくれる可能性が高いです。
選考において、企業は何よりも「自社に貢献してくれそうかどうか」ということを重視します。
自社に貢献してくれる人材を得るため、スキルを重視するんです。つまり、スキルの有無は合格の第一条件というわけではないということ。合格の第一条件はあくまでも「会社への貢献が期待できるか」であり、それを判断するためにスキルが必要というに過ぎません。
熱意も同様です。
スキルだけアピールするのではなく、熱意もしっかりとアピールする必要がありますよ。
マネジメントの経験
IT企業はよくアメリカ企業の影響を受けることがありますが、それでも日本企業的慣習や考え方は色濃く残っています。
そのひとつが、年代が上がると同時により上流の工程に関わることを期待されることです。30代ともなると、マネジメント業務に携わることが期待される傾向があります。
ただ、近年はスペシャリストの需要が増大しているという事情があるんです。そのため、完全なマネジメント側には立たず、現場のスペシャリストとして活躍し続けることもできます。
それでも、マネジメント経験はあったほうが良いです。
30代以降にはマネジメント経験を求める求人が多い傾向がありますから。
そして、近年最も求められているのは、マネジメントもできるスペシャリストです。現場で技術を活かして開発に貢献しつつ、全体を見渡して意見もできると企業側としてはありがたいですから。IT業界は人手不足なので、一人でさまざまなことができることが求められるんです。
マネジメント経験がある人は、それをしっかりアピールしましょう。
経験がない場合は、マネジメント業務に関わる意思があることが求められます。経営戦略について学ぶなど、アピールポイントを増やしておきましょう。
【未経験の場合】30代からのエンジニアへの転職で求められること
30代からエンジニアに転職したいと思っている、未経験の人もいるでしょう。30代未経験者がエンジニアに転職することは、不可能ではありません。IT業界は深刻な人材不足ですから。ただ、厳しいことは確かです。そこで、何が求められるかをチェックしましょう。
前職で結果が出ていること
30代未経験者は、前職で結果を出していることが求められます。
ポテンシャルをはかるためです。前職で結果を出した優秀な人間であれば、仕事が変わっても早く対応できるようになるだろうと安心できるんです。そのためには、具体的な数字などでわかる実績が必要になります。
たとえば営業職の場合、営業成績が1位だった、これまで○千万売り上げた、などですね。他にも自分の仕事が他の企業や一般ユーザーに与えた影響や、企業内外からの表彰などがあるとわかりやすいです。
実務に必要なスキルを身に着けていること
未経験者であれば、年代に関係なく入社後に研修を受けることになります。ただし、年代が上がるごとに研修にかけることのできる時間は短くなると考えたほうが良いです。20代なら、今後じっくりとキャリア形成を行う時間があります。
一方、30代は他の人はすでにキャリアの岐路に立っている時期です。20代と比べ、時間がありません。急いで戦力として成り立つ人材にし、キャリアを形成してもらうことを企業は考えます。
そのため、実務に必要なプログラミング技術などのスキルを身に着けている人しか、採用しません。
これも、具体的な数値などがあるとアピールしやすいです。
例えば、自分が制作したサイトのPV数、ポートフォリオとして作ったアプリのダウンロード数などがわかりやすいでしょう。
変化に対応すること
30代未経験者がエンジニアに転職する際、変化への対応が求められます。仕事が変わると、さまざまな物事が変わるものです。働き方、考え方、同僚や先輩との接し方などですね。根本から全てが変わると思っておいたほうが良いでしょう。
そのうえ、IT業界は変化が早い業界です。
30代ということで、これまでの業界での慣例などを引きずってしまう人がいることを企業は懸念します。そういったものを忘れ、変化に対応する能力があることをアピールしましょう。
年下上司・年下先輩と接する際の素直さ
30代未経験者が転職した場合に起きる変化と言えば、上司や先輩の年齢もそうです。これまでは上司や先輩が年上であることが多かったでしょうが、異業種・異職種に転職することで、上司や先輩が年下になることがあります。
30代以上の人の中には、年下というだけで素直に言うことを聞かなくなる人もいるんです。
そのような人は、結局人間関係がうまくいかずに辞めてしまう傾向があります。しかも、職場内を散々引っ掻き回したうえで辞める場合もあるため、企業にとっては厄介です。
採用されるには、素直さを示す必要があります。人柄もしっかりチェックされているということを踏まえて、転職活動を行いましょう。
30代エンジニアの転職を成功させるためのポイント
30代エンジニアに求められることがわかれば、転職を成功させる方法も見えてきます。そこで、最後に30代エンジニアの転職を成功させるためのポイントを6つ紹介しましょう。それぞれ簡潔に紹介するので、自分で考えながら参考にしていただけると幸いです。
転職活動の全体像を見据えてスケジュール作成する
転職活動を行う前に、スケジュールを作らないといけません。
スケジュールを作る際は、転職活動の全体像を見据えましょう。30代になると転職2回目以降の人も多いでしょうから、20代の頃と比べて転職活動を俯瞰して見やすいはずです。
まず、転職にかける期間は3ヶ月を目安にしましょう。3ヶ月は、転職までにかかる期間の相場です。1ヶ月という短い期間を設定すると、なかなか思うように進まず変に焦ってしまいかねないので注意しましょう。
続いて、いつ頃までに求人を吟味して選考書類を送るのかを考えます。その次は、面接を受け始める時期です。働きながら転職活動をする場合は、特にこの面接スケジュールが重要になります。
調整しやすいよう、最初から「この時期は空けられるようにしておく」と決めておくと良いでしょう。
キャリアについてもう一度深くまで考える
これまで何度か語ってきたように、30代はキャリアの岐路です。今、目の前にはさまざまな道が分岐していることでしょう。一度分岐点から進み出すと、変更するには大きな労力と努力が必要になります。20代に比べて、方向転換は大変です。
そこで、これまで描いてきたキャリアプランが今の自分にとって本当に最適かどうか、もう一度深く考えてみましょう。
20代で転職を経験した場合、そこでキャリアプランを考えているはずです。そのとき考えたキャリアプランは、さまざまなことを経験して学びを得た今の自分にとって、魅力的でなくなっている可能性もあります。
徹底的に自己分析をし、キャリアプランを最適化しましょう。
自分の市場価値を明確にする
経験を積めば積むほど、自分のレベルや立ち位置が見えにくくなることがあります。社内評価と世間での評価を同一視してしまったり、自己評価と社内評価とを混同してしまったりすることが原因のひとつです。
30代ともなると「自分の価値くらい把握しているよ」と思うかもしれませんが、本当に把握できているかどうか確かめましょう。
自分の市場価値を明確に把握するには、徹底的な自己分析が必要です。
まず、自分のスキルの棚卸しをしましょう。プログラミング言語、人間的な長所、その他エンジニアとして役に立っているスキル、身に着けたスキルなどなど…。経験を振り返ることで分析したり、社内の人間にヒアリングして分析したりさまざまな方法で分析してみてください。
次に、そのスキルレベルでどのような仕事ができるのか、どのように会社に貢献できるのかを考えます。
そして、転職市場を分析し、客観的な市場価値を知りましょう。
具体的な数字を交えて実績をアピールする
未経験者向けの項目で述べましたが、経験者も具体的な数字を交えて実績をアピールすることは大切ですよ。
ここで言う具体的な数字というのは、たとえばサイトのPV数やプロジェクトで動いた金額などさまざまです。数字でなくとも、客観的にその実績を判断できるのであれば構いません。
アピールするための裏付けですね。
日々の学習と企業研究で熱意をアピールする
30代エンジニアの転職では、熱意が大事だと語ってきました。
ただ、熱意は精神的なものです。言葉と態度で伝えるのが一番ではありますが、簡単ではありません。そこで、熱意をよりわかりやすく伝えるための準備が必要です。
その準備が、日々の学習と企業研究。
日々新しい技術や今後必要とされるマネジメントスキルなどについて学んでいることを伝えることで、熱意と向上心をアピールできます。
企業研究は、それだけこの選考に賭けているのだということを伝えるのにぴったりです。企業研究の深さを伝えるには、企業研究で得た情報をもとに志望動機などを作るのがおすすめ。志望動機が深くなればなるほど、企業研究の深さも相手に伝わります。
そのため、企業ホームページだけでなくSNSや企業口コミサイトなどさまざまなコンテンツを見て、研究することが大切ですよ。
転職エージェントを頼る
転職を成功させるには、転職エージェントを頼るのがおすすめです。特にエンジニア専門の転職エージェントが良いでしょう。
エンジニア専門のエージェントは、IT業界とエンジニアを取り巻く状況について深く理解しています。そのうえ、転職市場のことをしっかりと把握しているため、アドバイスが的確です。
そして、多くのエージェントは自社に求人を預けた企業のことをしっかりと研究しています。その企業研究によって求人掲載の可否を決めることもある重要なものなので、転職希望者が知り得ないことまで深く調べていることが多いです。
転職エージェントから的確なアドバイスを受け、自分に合った求人を紹介してもらうことが30代のエンジニアの転職を成功させる近道となるでしょう。
30代エンジニアの転職はキャリアアップの好機!
30代エンジニアの転職は、キャリアの分岐点です。つまり、キャリアアップするためのチャンスと言い換えることもできます。この転職をうまく進めることができれば、キャリアアップが近くなるでしょう。逆にうまく成功させられなければ、キャリアアップが遠のきます。
慎重に、じっくりと深くまで考えたうえで転職活動を行いましょう!