フリーランスや下請けの会社にて、ネットワークエンジニアとして身を立てる方も多いでしょうが、他種のシステムエンジニアと同じく、当たりハズレの案件があるのも事実です。
中でも、デスマーチが発生中の現場であったり、人員交代が激しい現場などは、誰の目に見ても明らかな「ハズレ」でしょう。
通常の流れでは、案件を請負う前に、顧客担当者と打ち合わせを行いますが、その中での内容がとても大切です。
請負っても「問題ない」案件なのか否か、その時の紹介内容とヒアリングで見極める必要があります。
そこで今回は、ネットワーク案件で「失敗しない」案件の選び方についてを、解説していきたいと思います。
ネットワークエンジニアの案件とは
まずはじめに、ネットワークエンジニアの請け負う案件の種類についてご紹介いたします。ご紹介には無い、特殊案件もあるかと思いますが、概ねの形としてピックアップしてみました。
ネットワークエンジニアの案件:設計及び構築案件
ネットワークエンジニアの花形とも呼ばれる設計及び構築案件は、その名の通り、案件の要件定義から機器選定、設計及び構築に至るまでを業務として執り行います。
この案件は、経験3年以上のエンジニアがつく事が多く、相応のスキルと知識が必要です。
ですが、こちらの案件は重大な責任を伴う事も少なく無く、最も炎上しやすい案件となる傾向があります。
ネットワークエンジニアの案件:運用及び保守
こちらは、既設のネットワークシステムやインフラの運用と保守を執り行う案件です。
24時間365日の監視体制や、イベントや障害時のシステムコールに対応する保守など、運用保守は実に様々な場面をサポートする印象ですが、予めマニュアルやナレッジが用意されている事が多いため、手順書通りに淡々とこなしていく形が多いです。
問題が発生した際は、その設計や構築に携わったエンジニアをアサインする形になりますので、責任が軽微な傾向があります。
しかし、常時監視体制のシステムだと、人員の確保に苦慮する場面もあり、交代人員が出勤するまで勤務するなどの対応を迫られる場面もあります。
ネットワークエンジニアの案件:SE常駐、担当
システム変更が度々実施されるシステムにおいては、常日勤でエンジニアの派遣を要請される場合もあります。
その他、SEサポートの契約に基づいて「イベントや障害時に出向を依頼される」こともあり、それらをサポートする事もあります。
経験3年などの実績を持たずとも、ある程度の知識を有するエンジニアが選ばれる事が多い傾向があります。
これは、メインの業務の傍ら実施する事も多く、トラブル時に貼り付けになり、メイン業務が遂行できないなどの嫌いがあります。
炎上しにくい案件、比較的安易な案件の見極め方
案件の中でも炎上しにくいのは、総じて「重大な責任を伴わないこと」であることは確かです。
例えば、中小企業相手の設計・構築案件は、企業ポリシーが緩い所が多く、マイルストーン/納期や設計方針を自由に設定することが出来たり、万が一のトラブルや障害の際も、企業情報システム担当がおおらかに許容してくれることがあります(ただし、それなりの計画と信頼関係を築いておく必要がありますが)。
逆に、大企業だと厳しいのか?と言われると「責任や担当範囲を明確にしており、その範囲が無理難題ではない」場合は、炎上しにくい傾向があります。
運用・保守については、人員の流動が激しくなければ、至って安定的な業務遂行プロセスが出来上がっていますので、炎上に至る可能性が少ないようです。
SE常駐や担当となった場合は、運用上において「問題となり得る部分」を洗い出しておく必要が生じます。
あとあと炎上してそれが尾を引いたり、責任分界点が曖昧なままだったりすると、顧客より「折角、プロに依頼したのに」と、不満を持たれたり、ズブズブとその案件に引きずり込む羽目になってしまったりと、ろくなことになりません。
この手の業務は、ITコンサルとして相談に乗ることがメインとなっていますので、終始、アンテナを高くしておく事が、炎上に至らない秘訣となります。
まとめますと、設計・構築案件は「責任や担当範囲が明確で、無理難題ではないこと」、運用・保守案件においては「人員の確保調整が取れていること」SE常駐や担当においては「案件の是非にかかわらず、常にアンテナを高くしておくこと」が概ねのポイントとなります。
実際に、このような理想的な案件は少ないかのもしれませんが、完璧でないにしろ、それに近い案件は必ずしも存在します。
なるべくなら避けたい、超危険な案件
言わずと知れた「危険な案件」は、官公庁が主催する入札案件や、運用ポリシーや責任分界点がSE寄りになってしまっている案件です。
主に大規模案件であることが殆どですので、それなりの責任と作業内容が多いものとなります。
大学や官公庁が主催する、入札案件
特に入札案件などは「血税をもとに依頼・運用されている」ことが多く、コンプライアンスポリシー処か、法律に当てはめたポリシーが度々適用されます。
これだけでも「つい、尻込みする」SE諸兄は多いのですが、躍起になった命知らずなSEであったり(私もそうです)、案件へのアサイン前に何も知らされていなかったり(良くありますね)、何かと不幸なパターンが多いようです。
業務にあたり、これまでに問題のなかった手法がNGとされたり、企業向け案件では省略されても問題なかった部分が契約上必須であったり、「法律に当てはめたポリシー」が、業務を煩雑化・停滞化させることもしばしば。
フリーランスで官公庁案件にアサインされることは、法律の壁によってほぼ無いのですが、中には2重3重の請負にて、現地に入場する事ができるのも確かです。
それ相応のスキルや知識、経験を身につける事ができますが、入場するにあたり、双刃の剣であることを覚悟した方が良いでしょう。
病院や放送局などの、別ジャンルにて専門性の高い案件
専門性の高い部分の多い案件は、その専門性とシステムのネゴシエーションで剥離が生じる可能性が高く、単純にインフラを引くというわけにもいきません。
導入の段階で「実はこうではなかった」ということもままあり、責任を課される立場としては、苦しい状況に陥りがちです。
特にネットワークエンジニアは「停止してはいけないシステム」を手がける事が多く、設計するシステムには、多大な工数をかけ、綿密に構築していく事になります。
また、別ジャンルで専門性が高いということは、プロ気質の顧客が多く、目的を達するために様々な検討や要求を依頼されることが多いのです。
案件ヒアリングのポイントとテクニック
アサイン前に案件面談やヒアリングを実施する場が設けられますが、営業任せにすると、やがて痛い目を見るのは自分自身ですので、積極的に介入していきましょう。
まず「自分のアサインが必要になった理由は何か」を明確にしておくことが大切です。
「人の入れ替わりが激しい」「途中で追加工数が必要になった」といった理由からは、実に当たり前のことのように思えますが、その裏に隠されたデメリットを洗い出すきっかけともなります。
次に「ドキュメントの整理具合」も気にしましょう。
「本当に何もなくて、既存機器を参考に、いちから作る必要がある」場合は、予想よりも遥かに多くの工数を取られてしまう要因になります。
また「いつまでに、何をやらなければいけないか」というマイルストーン/納期も聞いておきましょう。
これが「ある」現場では、比較的多忙な現場である可能性があり、「ない」場合は、安定しているか、顧客担当者の認識がかなり甘いか、のいずれかです。
マネジメントが出来るプロジェクトリーダーが居るかどうかでも、状況は変わりますが、ヒアリングの最中にその人となりを判断するのは難しい話です。
最後に判断するべき材料は、環境といった処でしょうか。
例えば、供与される機器や端末が最低限用意されている必要があります。
中には、端末の用意だけで2週間も時間がかかり、プロジェクトに支障が出る恐れもあります。
また、顧客の業者とは別に、データセンターや拠点サーバルームがある場合もあり、地方拠点へ常駐や出張することもあり得ますので、現状を把握しておくことは必須課題となるでしょう。