エンジニアが枯渇している状況から、IT未経験者を積極的に採用して、入社後に自社の教育カリキュラムを受講させつつ、必要なIT資格を取得した上で現場に配属させるIT企業が増えています。
教育の内容はその企業によってまちまちですが、一般的に多いのは1ヶ月〜2ヶ月間の研修期間が設けられており、技術研修として受けられるのは、Java、php、DB、Webの基本知識など。またインフラ系であればネットワークやLinuxの技術研修が多いですね。※カリキュラムは会社側で用意されているので選ぶことはできません。
ITエンジニアに挑戦したいと考えている求職者から見ると、入社後にお給料を貰いながら技術研修を受けて、ITの現場に出る(エンジニアとしてデビューする)ことが可能。しかも会社によっては、検収費用だけでなく資格費用も全額負担してくれるのですから、ありがたいことこの上ありません。
実際このような研修制度を売りにして、未経験でもOKな会社に入社することの実態はどうなのか、また目指しているエンジニアになれるのかどうかをお話しします。
未経験エンジニアにかかる採用コストと教育コスト
現実的な話からお伝えしますと、求職者側に勘違いして欲しくないのは、企業は学校ではないということです。
「ただより怖いものはない」とはよく言ったものですが、研修制度を売りにした未経験者の採用には裏もあります。
採用にかかる費用、研修期間の受講者の給料、講師のコスト、資格取得費用などが当然かかってくる訳で、それは全て前払いで会社が負担しています。どこかのタイミングで回収しなければ企業として成り立たちませんから当然です。
仮に未経験者を初任給22万円で雇ったとすると、会社側で負担するのは保険や交通費なども配慮すると27万円程度にはなるでしょう。2ヶ月の教育を行ったとしたら54万円のコストが発生します。
プラス教育に関わる費用、資格費用が上乗せされてきます。
また、未経験エンジニアを採用するコスト(広告費など)は、平均で50万円程度が必要ですから、入社から研修が終わるまでに、トータル100万以上の出費が発生しているのです。
この掛かった費用を、現場に配属されたのちに回収しなければビジネスとして成り立ちません。
ちなみに未経験エンジニアで、何らかの初級資格を持っている方が現場に入れる単価目安(会社がクライアントからもらえるお金)は、35万〜45万円程度です。平均して40万としましょう。
研修が2ヶ月で終わり3ヶ月目から現場に入場出来て、1年間で稼げるお金は400万円程度です。(40万×10ヶ月分)
そのエンジニアにかかる人件費は、ボーナス1ヶ月分を加味すると、27万円×13ヶ月=351万円となります。
これに採用コストの50万を足せば401万円となりますから、単純計算で利益はゼロです。
実際には、この数字に教育費、営業マンや事務のコスト、会社の維持費などが上乗せされるため、1年目は赤字になります。
2年目、3年目になってくると少しずつ単価も上がってきますので、未経験エンジニアの場合は、数年かけてやっと黒字化するイメージなのです。
しかし、そのエンジニアが順調に何年も働いてくれるかどうかというと話は別。業界や会社に肌が合わずに早期で辞めていってしまう方も多く、その場合は赤字のまま終わりです。
企業側はエンジニアの教育ではなく利益回収を優先する
このような状況ですから、企業側は入社してきた未経験エンジニアを早期に利益化させることを目指します。
具体的な施策は、
- 研修期間を短くする
- 案件を選ばせない
- 給料は出来るだけ抑える(上げない)
就職先の営業サイドでは、入社前から配属する現場を決めるための営業が始まっており、案件が決まり次第研修をストップして現場に配属させます。
2ヶ月の研修と言われていたのに、1ヶ月で研修が終わってしまうケースも当然ありますし、研修期間中でも研修と面談が重なれば面談が最優先されます。
また、未経験者を受け入れてくれる現場はほとんどありませんので、やりたい仕事につける可能性は非常に低くなってしまいます。それどころか実際にあるのが、開発会社に入社してJava研修を行ったが、配属する現場はなぜかインフラの運用監視案件。そして1年・2年放置というパターンです。
他にも、末端のテスターなど、開発スキルが伸ばせないのに負荷の高い案件をたらい回しにされた挙句、この業界から去っていってしまうという話もよくあります。
- あなたは未経験だから選べる案件はありません。
- まずはどんな案件でも現場経験を積んできなさい。
このような論を叩きつけられて、望まない仕事に配属させられる。ひどい例ですが、実際にこのような会社をたくさん見てきています。
また、入社してから2,3年は利益になりませんので、お給料もあまり上がらないと考えておいて良いでしょう。
3年で1,2万円は上がるかもしれませんが、その程度です。
結局のところ企業は学校ではありません。
教育制度で未経験者を受け入れることを大々的にアピールしていたとしても、採用したエンジニアで利益が確保できなければ赤字になってしまうので、エンジニアの教育や成長よりも、とにかく現場に突っ込むことで収益化を最優先してしまうのです。
とは言いつつエンジニアになれないという訳ではない
ネガティブな話をしてしまいましたが、もちろん成功ケースもあります。
研修後に運よく希望案件に配属されるケースもありますし、企業によっては、利益確保を第一優先にしつつもエンジニアの成長を大切にして、成長可能な案件にアサインしてくれる会社もあります。
また、1案件目で希望にそぐわない案件に配属されてしまったとしても、その案件でIT経験を積みつつ、きちんと自主学習や資格を取得していけば、2案件目、3案件目で希望の技術に携われる案件に配属されるチャンスは大きくなってきます。
いつまで経っても会社の意向が優先で、やりたいことにチャレンジさせてもらえないのであれば、そこで再度転職を考えても良いかもしれません。
1,2年の実務経験と資格や自己学習が積めていれば、転職の幅は広がりますし、大幅な年収アップも期待できます。
エージェントを活用して自分が成長できる会社なのか確認しよう
これからエンジニアを目指すみなさんが、雑で営業の事しか考えていない会社に入社してしまわないよう、転職業界のリアルをお話しました。
近年では、DYM_IT転職のようにIT未経験者や第二新卒の方に強みを持つエンジニア向け転職エージェントもあります。
未経験社や第二新卒に強みを持つエージェント会社では、さまざまな企業の若手採用のリアルを知っています。
今の会社からすぐに抜け出したい、未経験だけど今すぐITエンジニアとして転職を考えてたい方は話を聞いてみるのも良いかもしれません。