IT業界のエンジニアに限らず、多くの働く世代で「うつ病」などの心の病にかかる事は珍しくありません。
会社に所属するサラリーマンであれば、休業補償や場合により労災認定を受けられますがフリーランスだと厳しいのが現状です。
そこでこの記事では
- フリーエンジニアがうつ病になった実際のケース
- フリーエンジニアのうつ病で営業はどう動くか
- 心の病を抱えたエンジニアはどう働くべきか
を、私が実際に営業担当として体験したエピソードをもとにお伝えします。
フリーランスのエンジニアとして独立を考えている方や、現在心がしんどい方は、ぜひ読み進めてみてくださいね。
面談で好印象の女性プログラマーが転職を繰り返していたワケ
私が担当していたSさん(40代前半女性)は、もともと大手メーカーで長年プログラミング経験を積まれていました。3年前にパートナーとの同棲のため引っ越し、フリーランスとして各案件に参画しているという経歴です。
コミュニケーション能力も高くプログラミングも問題なく行えるので、どの案件でも引っ張りだこになりそうな方だなというのが第一印象でした。
しかし、数年単位で行われそうな案件でも半年~1年で終了しています。聞くと「炎上案件で勤務時間が多すぎた」「プロジェクトリーダーがパワハラで空気が悪かった」という理由で、自分から参画終了したケースがやや多かったです。
組み込み系のプログラマーSさん、案件には困らなかった
Sさんは、車載器や家電メーカーの組み込み系プログラマーでした。C言語やC++のコーディングはもちろん、テストも問題なく行えます。
Web系エンジニアに比べて組み込み系のエンジニアは貴重で、案件を自分から終了したとしても次の案件が見つかりやすいです。実際にSさんも2ヶ月以上のブランクはありませんでした。
組み込み系案件は常に人手不足で激務の傾向がある
私がSさんを担当していた2017年~現在2020年も、組み込み系の案件は人手不足です。特に車載(カーナビ)の案件はC++の技術者が見つかりづらく、どのエンジニアも残業して現場が回っている状態です。
Sさんが参画してきた案件も「月に40時間の残業は当たり前」というものがほとんどでした。
メーカーの経費削減で組み込み系の単価はやや厳しい
人手不足の組み込み案件ですが、メーカーの予算の都合でエンジニアに支払われる報酬がWeb系に比べて低いケースが多いです。
私の地域でWeb系のプログラマーは月50万円台後半~60万円台前半が相場でしたが、組み込み系は50万円台前半も珍しくありません。
うつ病を隠して案件決定したSさん、次第に無断欠勤が増えていく
さて後日知った事なのですが、実はSさんはフリーランスになって間もなくうつ病になっていました。しかしフリーランスのエンジニアには労災保険も休業補償もないので、Sさんは心が限界になったら現場を変えて働くという状態だったんです。
ちなみにSさんが同棲していたパートナーは無職。Sさんは私が頑張らないと!と無理やり頑張っていました。
無断欠勤があった翌日から、毎朝仕事に向かっているか電話連絡することに
私が紹介した組み込み系の案件に参画し始めて1週間、「Sさんが来ておらず、連絡が取れない」と連絡がありました。前日も30分ほど遅刻してきたとの事。
急いでSさんの携帯を鳴らすこと1時間、ようやく電話に出たSさんは「寝坊しました。でも体調が悪いので今日は休みます」と弱々しい声。
客先には体調不良と伝え、翌日からは体調と出勤できそうかの電話連絡(モーニングコールですね)をする事となりました。
1週間後、ついに電話に出なくなる
「おはようございます、体調はいかがですか?」という電話連絡をする事1週間、ついにSさんは私の電話にも参画先からの電話にも出なくなってしまいました。
マニュアルに沿って緊急連絡先であるSさんの父親にも連絡しましたが「何も聞いていない、娘が心配だ」との事。お父さんは飛行機の距離に住んでいて、すぐには駆け付けられそうにはありませんでした。
会社の指示により、営業担当の私が家庭訪問
IT業界ではエンジニアが失踪したり最悪の結果になったりする事もあるので、無断欠勤で連絡が取れない場合は営業担当が家庭訪問することも珍しくありません。
私もその日の予定を全てリスケし、Sさんの自宅へ。引き続き携帯を鳴らしたり、玄関でチャイムを鳴らしたりしましたが、全く反応はありませんでした。
Sさんの無事を確認したが、現場からは撤退することに
携帯、玄関のチャイム、ドアのノックでもダメだったので、最悪のケースを想定しアパートの管理会社へ連絡しようとしたところ、やっとSさん宅のドアが開きました。
「へみさん、私もう無理です」と泣き崩れるSさん、奥には布団からこちらを覗くSさんのパートナーがいました。とりあえず近くの喫茶店で話を聞くと、現場には問題ないけれど、薬を飲んでもうつ症状が治まらないとの事でした。
結局現場からは撤退し、Sさんへの案件紹介もストップするという結果になりました。
うつ病を発症してしまったフリーエンジニアは、どんな現場が向いているか
Sさんのように心の病を抱えたフリーのエンジニアは、守ってくれる会社がありません。なので、自分の体調と相談しながら案件を探す必要があります。
心の病になってしまったらまずは休養。医師の診断で復帰できるとなってもぶり返すことがあるので、無理なく働ける案件を探しましょう。
一度うつ病を発症すると、激務の現場はリスクが高い
Sさんがフリーランスで参画した案件のほとんどが「月40時間以上は当たり前」という激務のプロジェクトでした。
心が健康であれば問題ない人もいますが、うつ病のエンジニアには体調が悪くなるリスクが高すぎます。初めから時短勤務で参画するか、保守案件など残業が少ない現場を選びましょう。
うつ病経験のあるフリーエンジニアは、短期案件で自信を付けていくのがベター
まだうつ病から復帰して間もない方は、1~2ヶ月の短期案件で少しずつブランクを埋めていく働き方がおすすめです。
契約を完遂することで自信になり、うつ症状再発のリスクを減らせますし、業界全体に悪評が流れるのを防ぐという意味でも有効です。
営業担当同士では、問題のあったエンジニアの情報が頻繁に飛び交う
実は私の営業していたエリアは、SIerが“ブラックリスト”を持っている事も珍しくありませんでした。今まで問題があって退場になったエンジニアはプロジェクトのリスクになるので、書類の時点で断られます。
他にも営業同士の交流で「○○のプロジェクトで参画していた○○さんが問題を起こした」と情報交換があるケースもあるので、なるべく問題なく案件を終えたいところです。
心が折れる前に営業担当に遠慮なく相談!勤務体制に配慮してもらえるケースも
働き方改革で無理な勤務体系が改善されつつある昨今、心の病を持っていたとしても個人のペースで無理なく参画することも可能になってきました。
営業担当としては、心の病を隠してプロジェクトに参画するよりも、体調をきちんと伝えて頂いた方が良い結果になると考えています。
「仕事が貰えないんじゃないか」と不安にならず、遠慮なく営業担当に相談してみてくださいね。
筆者プロフィール
お名前:へみ
大学卒業後、関西で建設業・IT業界・製造業で人材派遣(汎用系、Web系、3DCADでの設計)の営業を5年間経験。自社社員の営業やフリーランスエンジニアとのやりとりを数多くこなす。
現在は寿退社し夫の家業である製造業の経理に従事。2児の母。
2016年からは副業で美容系ライターとしてWebメディアに数多く寄稿。2020年3月からは自身で美容系のWebメディアを立ち上げた。
趣味は美容研究、クラシック音楽、レース編み、ロードバイク。
Webメディア:30歳からの美容研究
Twitter:@hemmi81415047